コラムとケーススタディ

特許無効宣告手続における特許書類の修正について

2026-03-13

       特許権者が特許を取得した後、特許の保護や権利行使の過程で、しばしば特許権が異議を唱えられ、無効宣告請求が提起される状況に直面します。特許無効宣告手続において、特許権者は時として特許書類を修正して、特許請求の範囲を調整したり、無効となる可能性を回避したりする必要があります。したがって、無効宣告手続における特許書類の修正は、適切に範囲を調整して特許保護をより有利にすること、また修正案が円滑に受理入れられることが求められ、修正しないことや不適切な修正による関連する請求項が無効となるリスクを回避します。さらに、無効手続き後の救済手段である行政訴訟においては、請求項は再び修正することができません。そのため、特許無効宣告手続において、請求項の修正が必要な場合にどのように修正を行うかは、特許権者にとって非常に重視すべき事項です。

以下では、特許無効手続における特許書類の修正に関する要求を整理し、最高人民法院のいくつかの代表的な事例を踏まえてさらに検討します。

 

一、        無効宣告手続における特許書類の修正に対する要求

1、 特許書類の修正の基本要求

中国の特許制度において、特許書類の修正には非常に厳格な要求が設けられています。特許出願手続において、出願書類の修正を行う場合、原明細書(図面を含む)および特許請求の範囲に記載された範囲を超えてはならず、意匠登録出願書類の修正は原図面または写真が表示する範囲を超えてはなりません。

一方、無効宣告手続においては、修正に対する要求がさらに厳格となります。発明特許および実用新案特許において、特許請求の範囲の修正は原特許の保護範囲を拡大してはならず、また明細書および図面の修正はできません。意匠特許の文献は修正することができません。

2、 無効手続における特許書類の修正に対するより詳細な要求

原則として、特許請求の範囲の修正は、無効宣告の理由または合議体が指摘した欠陥に対処する範囲に基本的に限定され、かつ以下の4つのより詳細な要求を満たす必要があります:(i) 原請求項の主題名称を変更してはならない、(ii) 登録時の請求項と比較して、原特許の保護範囲を拡大してはならない、(iii) 原明細書および特許請求の範囲に記載された範囲を超えてはならない、(iv) 原則として、登録時の特許請求の範囲に含まれていない技術的特徴を追加してはならない。

さらに、特許審査基準は、修正の方式は「原則として」請求項の削除、技術案の削除、請求項のさらなる限定、明らかな誤りの訂正に限定されると述べています。

請求項の削除とは、特許請求の範囲から1項または複数項の請求項を削除できることをいいます。独立請求項であれ従属請求項であれ、削除することができます。技術案の削除とは、1項の請求項に並列的に記載された2以上の技術案のうち、1つまたは複数の技術案を削除することをいいます。請求項のさらなる限定とは、請求項に、他の請求項に記載された1つまたは複数の技術的特徴を追加し、その保護範囲を縮小することをいいます。

二、        事例を通じた無効宣告手続における特許請求の範囲の修正の検討

無効宣告手続における特許書類の修正に関する上記の要求に対し、実務上どのように理解すべきかについては、しばしば疑問や論争が生じます。以下では、いくつかの事例を踏まえて、一般的な問題について検討します。

1、 特許審査基準に列挙された修正方式は包括的なものか

実務において、特許請求の範囲の修正は包括が上記の方式であると理解すべきではありません。最高人民法院は判例において、特許審査基準に列挙されたこれらの修正方式自体が、修正方式の合法性を判断する唯一の裁量基準ではないことを確認しました。

2020)最高法知行終246号特許無効行政紛争案において、特許権者は無効手続において、請求項234の付加技術的特徴を変更しないまま、従属請求項4の引用関係を「請求項3を引用する」から「請求項2を引用する」に変更しました。国家知識産権局は当該修正を受け入れました。

しかし、一審法院はこの修正を受け入れず、修正後の請求項4が原請求項3における「前記第2検出器が第1検出器と放射源との間に位置する」という技術的特徴の限定を削除したものに相当し、当該従属請求項の保護範囲が拡大したと判断しました。

最高人民法院は、一審法院の上記見解を認めず、以下のように指摘しました。実務において新たに出現する修正方式に対しては、司法・行政部門および社会公衆は適度な容認の姿勢を持つべきであり、修正の実質を超えて直接にある具体的な修正方式を制限または禁止するためにいかなる新たな法的原則を追加する司法理念については、十分な慎重さと抑制を保つべきである

最高人民法院は、審査基準において無効手続における請求項の修正方法としていくつかの具体的な修正方式を列挙しているが、この列挙式の表現内容は、行政部門が無効申請および審査実務から総括・抽出した一般的な修正方式に過ぎないと判断しました。この列挙式規定は、特許権者、無効申請人および行政部門の間の行動パターンを調整し、三者間のインタラクション効率を向上させることに役立つが、当該規定自体が修正方式の合法性を判断する唯一の裁量基準ではなく、また審査基準における「原則として〜に限定される」という表現も、他の修正方式を絶対的に排除するものとして理解すべきではないと述べました。

2、 請求項の修正が原特許の保護範囲を拡大するかどうかの比較基準

請求項の修正が原特許の保護範囲を拡大するかどうかを判断する際には、修正後の独立請求項を、原特許の保護範囲が最大である独立請求項と比較すべきであり、原特許の保護範囲が小さい従属請求項と比較すべきではありません。これについて最高人民法院は判例において確認し、法的考慮を示しました。

2019)最高法知行終19号特許無効行政紛争案において、特許権者は無効手続において、従属請求項2および20の付加技術的特徴を請求項1に追加しました。

国家知識産権局は特許権者の修正を受け入れず、その理由は以下の通りでした:登録請求項20は請求項19を引用し、請求項19はさらに請求項18を引用する。登録請求項18が請求項1に従属する請求項2を引用する場合、請求項20の技術案は請求項12181920の全部の技術的特徴を含むべきである。一方、修正された請求項1は登録請求項1819の特徴を含んでいないため、関連規定に適合しない。

一審法院も国家知識産権局の見解に同意し、上記修正を受け入れず、修正後の請求項1は請求項19における要素の具体的含有量範囲について限定を設けていないため、原特許の保護範囲を拡大したと判断しました。

最高人民法院は、当該修正を受け入れるべきであると判断し、以下のように指摘しました:請求項の修正が従属請求項の全部または一部の付加技術的特徴をその引用する独立請求項に補入するものである場合、修正後の独立請求項が原特許の保護範囲を拡大したかどうかを判断する際には、修正対象となる原特許の独立請求項の保護範囲を基準とすべきであり、当該付加技術的特徴が属する原請求項の保護範囲を基準とすべきではない

最高人民法院は、修正を受け入れる法的考慮を以下のように示しました:特許の登録後は社会公衆に対して公示作用を有し、社会公衆の信頼利益は通常、保護範囲が最大の独立請求項に基づいて構築され、これに基づいて自らの行為の合法性を予測・評価する。従属請求項の付加技術的特徴を独立請求項に追加することは、独立請求項のさらなる限定であり、原独立請求項の保護範囲を拡大するものではなく、むしろ原独立請求項の保護範囲を縮小するることになる。これに基づいて、原特許の公示効力を害することはなく、また原特許に基づいた社会公衆が有する信頼利益を害することもない。

3、 特許無効手続における請求項の修正の対応性要求

最高人民法院は判例において、無効手続における請求項の修正が無効宣告の理由に対応する範囲に限定されるべきであることを支持し、無効宣告の理由に指摘される欠陥を克服するという名目で、実際には請求項の記載を最適化することを目的とする修正、すなわち非対応的な修正は、特許確定手続の制度的位置づけに適合しないため、受け入れないことができると判断しました。

2021)最高法知行終556号特許無効行政紛争案において、特許権者は無効手続において複数の新たな独立請求項を形成しました。

-- 修正後の請求項1は、原請求項1の基礎にその従属請求項2467の付加技術的特徴を追加したものであり、

-- 修正後の請求項4は、原請求項1の基礎にその従属請求項3(原請求項1を引用する)の付加技術的特徴を追加したものであり、

-- 修正後の請求項5は、原請求項9の基礎にその従属請求項111214の付加技術的特徴を追加したものであり、

-- 修正後の請求項7は、原請求項9の基礎にその従属請求項13(原請求項9を引用する)の付加技術的特徴を追加したものであり

-- 修正後の請求項11は、「請求項1または9」を引用していた原独立請求項15を「請求項145または7」を引用するように変更し、これに基づいてその従属請求項161720の付加技術的特徴を追加しました。

国家知識産権局は、修正後の請求項15は関連規定に適合すると判断したが、修正後の請求項4711は受け入れず、その理由は以下の通りでした。原請求項1はさらなる限定方式の修正を経て、技術的特徴が増加され保護範囲が縮小された新たな請求項1となり、この時点で原請求項1はもはや存在しないため、新たな請求項4の修正は受け入れない。修正後の請求項711も同様の欠陥があるため、同様に受け入れない。

一審法院は国家知識産権局の上記結論を支持し、以下のように判断しました。修正後の請求項14を同時に存在することを許容すれば、1項の独立請求項が同時に複数項の独立請求項となることに相当し、原請求項の保護範囲を拡大することになり、関連規定に適合しない。同様の理由により、修正後の請求項711も受け入れるべきではない。

最高人民法院は異なる意見を示し、修正後の請求項47が受け入れべきであるが、請求項11が受理すべきではないと判断しました。その理由は以下の通りです。(i) 修正後の請求項47は原請求項313そのものであり、修正により新たに形成された請求項ではなく、当然の審査基礎であり、いわゆる修正により受け入れできないという問題は存在しない。(ii) 特許確定手続における請求項の修正は無効宣告の理由に対応する範囲に限定されるべきという審査理念に基づき、国家知識産権局が修正後の請求項11を処理したことは妥当なものである。

最高人民法院はさらに次のように指摘しました。特許確定手続は、請求項が登録された後に他人から無効宣告請求が提起された場合に、無効宣告の理由に基づいて登録の正当性を検証する手続である。これは登録の正当性を全面的に再調査する手続でもなく、また請求項の記載を最適化する手続でもあない。したがって、特許確定手続における請求項の修正は、原則として無効宣告の理由(無効宣告請求人が提出した無効宣告の理由または補充証拠、および国家知識産権局が導入した無効宣告請求人が言及しなかった無効宣告の理由または証拠を含む)に対応することに限定されるべきである

さもなければ、非対応的な修正が受け入れるようになれば、特許確定手続は登録後に請求項の記載を最適化する機会を追加的に取得するツールに変質することは容易に想像できます。このようになれば、出願当初、登録当初から品質を向上させることに不利になり、無効宣告請求手続の真の役割の発揮にも不利になり、また特許登録後の関連する利害関係者を含む社会公衆の利益のバランスを崩すことにもなりかねません。そのため、非対応的な修正については、いわゆる「情報範囲」(すなわち、特許登録手続における請求項の修正は原明細書および特許請求の範囲に開示された発明の全部の情報範囲を超えてはならない)および「保護範囲」(すなわち、特許確定手続における請求項の修正は原特許の保護範囲を超えてはならない)を超えていない場合かつ特許審査基準が認める修正方式に該当する場合であっても、受け入れないことができます。例えば、請求項の修正において修正に対応する無効宣告請求および理由が欠如している場合は、一般的にその修正範囲および修正方式を審査する必要はなく、直ちに受け入れないことができます。また、同一の行政審査手続において、1項の請求項に対する無効宣告の理由が当該請求項の修正により対応され、かつ修正後の請求項が受け入れた場合、当該原請求項の別途の修正およびそれに伴い取得されたより多くの新たな請求項は、一般的に対応対象がなくなったため、受け入れないことができます。

留意すべきなのは、特許確定手続において、修正されていない請求項は当然の審査基礎であり、請求項の修正に対する法的またはその他の制限の評価対象を構成しないため、審査基礎を確認する際には、まず関連する請求項が原請求項であるか修正により形成された新たな請求項であるかを明確にすべきであるとのことです。請求項の修正の有無については、実質審査を行い、修正前後の請求項の保護範囲に実質的な変化が生じたかどうかを基本依据とすべきです。一般的に、単純な請求項の番号の変更、従属請求項と独立請求項の記載方式の簡易な転換、並列技術案を含む請求項の簡易な分割等は、保護範囲に実質的な影響を与えない記載の調整であり、請求項の修正になりません。

4、 特許無効手続における「さらなる限定」方式の修正の審査

前記事例3において、最高人民法院はさらに次のように指摘しました。ある請求項の修正方式が「さらなる限定」に該当するかどうかを判断する際、国家知識産権局は以下の3のみを審査すればよい。(1)修正後の請求項が修正対象の請求項のすべての技術的特徴を完全に含んでいるか、(2)修正後の請求項が修正対象の請求項と比較して新たな技術的特徴を追加しているか、および(3)追加された技術的特徴がすべて他の原請求項に由来するものであるか

5、 特許無効手続において従属請求項のみを修正することの受け入れ可否

実務において特許書類の修正を審査基準に列挙されたいくつかの種類の修正方式に限定すべきではなく、他の修正方式を排除すべきではないことについて、最高人民法院は判例において支持を示しました。

2021)最高法知行終548号特許無効行政紛争案において、特許権者は独立請求項1を修正しないまま、従属請求項の技術的特徴を組み合わせて新たな従属請求項を形成しました。

国家知識産権局はこれを受け入れず、以下のように判断しました。「請求項のさらなる限定」に関する規定は、「限定」の行為が請求項に他の請求項に記載された1つまたは複数の技術的特徴を補入することを明確にしており、「限定」の結果が「保護範囲の縮小」であることをも明確にした。「保護範囲の縮小」とは、修正対象の請求の範囲の原保護範囲に対するものであり、縮小後の保護範囲でそれ以前の大きな保護範囲を置き換えられることを意味する。特許権者は原独立請求項に対していかなる限定も行っておらず、修正後も原独立請求項は保留されているため、「保護範囲の縮小」の要求が体現されていないため、この修正方式は「請求項のさらなる限定」に該当しない。

これに対し、一審法院および最高人民法院はこの見解を認めず、いずれも特許権者が行った修正は受け入れべきであると判断しました。本件において、特許権者は従属請求項に対して修正を行ったが、保護範囲が最大の独立請求項1を修正しておらず、したがって本特許の保護範囲を拡大していません。また、上記従属請求項の修正後に追加された技術案は、当業者が本特許の明細書を読んだ後、明細書から明確に導き出すことができる技術案に該当します。以上より、本特許の請求項の修正は本特許の保護範囲を拡大しておらず、また原明細書および特許請求の範囲に記載された範囲を超えていません。特許権者の修正書類は受理すべきであります。

最高人民法院は、「請求項のさらなる限定」という修正方式に関する規定は、必ずしも独立請求項に対して行われる限定でなければならないことを明確に要求していないと指摘しました。また、無効手続における請求項の修正方式は原則として請求項の削除、技術案の削除、請求項のさらなる限定、明らかな誤りの訂正に限定されるが、他の修正方式が存在する可能性を完全に排除しているわけではありません

無効手続において、修正方式は手段として、請求項書の修正が原明細書および特許請求の範囲に記載された範囲を超えないこと、および原特許の保護範囲を拡大しないことという2大法的基準を満たすという立法目的の実現に着目べきであり、行政審査行為の効率と特許権者の貢献の公平な保護を両立させるべきであり、具体的な修正方式に対して過度に厳格な制限を設けるべきではありせん。さもなければ、修正方式に対する制限が純粋に特許権者の請求項の不適切な記載に対する罰則となることになります。本件において、特許権者の修正方式は、従属請求項に他の従属請求項の特徴を補入して新たな従属請求項を追加するものであり、この修正方式は請求項のさらなる限定に該当します。

三、        まとめおよび提言

前文の修正要求および事例から、無効手続における特許書類の修正には厳格な要求があることがわかります。例えば、発明または実用新案特許の特許請求の範囲のみを修正できます。修正は範囲を超えてはならないだけでなく、原特許の保護範囲を拡大してはならず、すなわち修正対象となる原特許の独立請求項の保護範囲を拡大してはならなりません。修正は原則として無効理由または合議体に指摘された欠陥に対応する範囲に限定され、非対応的な修正は受け入れない可能性があります。前文に列挙した請求項の修正のいくつかの方式は、他の修正方式が存在する可能性を完全に排除しているわけではありません。無効手続において、原明細書および特許請求の範囲に記載された範囲を超えないこと、および原特許の保護範囲を拡大しないことという2大法的基準を満たす前提で、特許権者は引き続き特許請求の範囲に対して他の修正方式を採用することを試み、最大限に自らの権益を保護することを図ることができます。

 

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