OEM(Original Equipment Manufacturer)は本文において外国関連相手先ブランド生産であり、即ち、中国国内における加工企業が中国国外の委託先の指示により製品を製造・加工し、且つ委託先の海外商標を貼付し、国内加工企業が税関輸出の方式で全部の商標を貼付した製品を海外の委託先に納品し、海外の委託先より国内企業に加工費用が支払われ、且つ海外の委託先のみにより海外市場のOEM製品の販売を担当する貿易方式である。国内の通常の商業モデルと異なり、OEMで生産され専門に中国から製品を輸出する貿易方式において、代工製品は全部国内貿易市場に流通しなく、商標の権利侵害に関する紛争案件の中で、中国最高人民法院のその紛争案件に係わる商標の使用に対する認定には変化の過程があるため、本文は最近法院の判決により、OEM貿易方式の中で、どのような商標使用行為が中国における商標の使用行為と認定される可能性があり、その後の侵害認定にどのような影響を与えるかをさらに分析したい。
1.商標の使用に対する司法機関の認定基準の変遷
外国関連相手先ブランド生産は中国の重要な輸出貿易方式であり、その中の商標の権利侵害問題は国内外に注目される。中国各地の人民法院はこの問題に関する多くの案件を処理し、判決の結果と理由もさまざまである。それによって、司法機関の認定基準は大きな変化を遂げた。
特に2015年、中国最高人民法院は「PRETUL案」(最高人民法院(2014)民提字第38号民事判決書)を再審し、まずOEM製品に委託先の関連標識を使用し且つ全部輸出し、商品が中国市場に流通しないから、即ち当該標識は中国領域以内に商標の識別機能を発揮できないため、中国国内の関連公衆が当該標識を貼付した商品の出処について混同且つ誤認を生じる可能性がないと認めた。そして、OEM製品に委託先の商標を貼付する行為は、中国国内にただ物理的な貼付する行為に属するため、商品の出処を識別する機能を持っていないと認めた。従って、OEM製品に標識を貼付する行為は商標意味での使用行為と認められない。それに、2017年に最高人民法院が「東風案」((2016)最高法民再339号民事判決書)を再審し、外国関連相手先ブランド生産において商業標識が中国領域内に商標の識別機能を発揮せず、関連公衆の混同且つ誤認を招かないため、商標権利侵害にならないことを再び表明した。この時期に、中国法院は主に外国関連相手先ブランド生産の商標貼付が商標使用にならないと認めた。
だが、2019年、最高人民法院は「本田案」を再審し、商標使用行為が客観的な行為であり、通常には物理的な貼付、市場流通など多くの段階を含み、商標法的な意味での「商標の使用」になるかどうかは商標法に基づいて全体的に一致した解釈をしべき、全体の行為を切り離してある段階だけにこだわるべきではなく、単一の一環で行為過程を覆うことを防止し、単一の段階で行為全体を代えることを克服しべきだと明確に認定した。法律の適用において、商標法の法律製度の統一性を維持し、商標法の商標権利侵害判断の基礎規則に従い、外国関連相手先ブランド生産という貿易方式を商標権利を侵害しない例外状況と簡単に固まるべきではない。同時に、中国に登録しない商標にとっては、中国国外に登録されても、中国に商標登録専用権も有しなく、それに応じて、中国国内の民事主体が取得した「商標使用授権」というものも、中国商標法に保護される商標の合法的権利に属さず、商標権を侵害しない抗弁事由とすることはできない。その後、中国人民法院は基本的に外国関連相手先ブランド生産製品に標識を貼付する行為が商標使用になるという裁判観点を採択した。
2.現在司法機関が商標の使用に対する認定
商標法における商標の使用とは商標を商品、商品の包装又は容器及び商品の貿易文書に使用し、或いは商標を広告宣伝、展示会およびその他の商業活動に使用し、商品の出処を識別する行為と指す。それにより、商標法の意味での商標の使用になるには、商標に商品の出処を識別する作用を発揮させる必要があり、それには商品の出処を識別する作用を発揮させる可能性があり及び実際に商品の出処を識別する作用を発揮させることを含む。即ち、使用行為で商標に商品の出処を区別する可能性が与えられると、商標法の意味での商標の使用に属する。
最高人民法院が2019年再審した「本田案」と中国国内に一般な商業モデルに使用された表現形式と合わせ、筆者は、OEM生産が専門的に中国から輸出に用いる場合に、以下の商標使用行為では、商標に商品の出処を識別する可能性が与えられ、商標の中国における使用と認められる。
(1)委託先の商標を直接貼付、刻印、焼印または編みなどの方式でOEM商品、商品包装、容器、ラベルなどに付着する
2021年11月12日、福建省厦門市中級人民法院が公表した(2021)閩02民終5888号商標権利侵害紛争民事判決書と、2022年03月07日広東省江門市中級人民法院(2021)粤07民終7189号商標権利侵害紛争民事判決書は、いずれも最高人民法院の観点をさらに強調し、OEM製品が中国市場に進出していないことで、消費者に商標を混同させないという抗弁を支持しないと表明した。同時に、経済グローバル化の発展に伴い、権利侵害に訴えられた商品が海外に輸出されても、国内市場に還流する可能性があることをさらに明らかにした。中国消費者は海外旅行・消費の人数が多く、「ブランド商品」に対しても接触や混同の可能性があり、物理的に貼付した商標が商品の出処を区別する役割を継続的に発揮することが示している。
したがって、委託先の商標を直接貼付、刻印、焼印または編みなどの方式でOEM商品、商品包装、容器、ラベルなどに付着する行為は、中国における商標の使用行為に属する。
(2)委託者の商標を代工製品の説明書、紹介マニュアル、出荷書、運送状などに使用する
OEM貿易において、物理的商標を貼付する行為はただ代工工場の内部における一つの段階であり、OEM製品が加工から納品完成まで、全過程にOEM製品の説明書、ハンドブックの印刷、製造、OEM製品の積み降ろし、輸送、輸出通関など多くのフローに関わる。
加工段階における物理的な貼付行為を参考し、筆者は、輸出の要求を満たすために、一部のOEM製品の包装は製品説明書とハンドブックなどを添付する。製品説明書とハンドブックの印刷・製造、OEM製品の積み降ろし、輸送する行為は中国国内における行為であるから、説明書、ハンドブック、出荷書、輸送書などのファイルに商標を使用する行為は、商標に商品の出処を識別する可能性が与えられ、中国における商標の使用行為に属する。
(3)商標は代工製品の輸出入検査検疫証明書、通関書類などに使用する
OEM製品が積み降ろし、税関まで輸送、納品を完成する部分は、OEM加工貿易の最後の一つの段階であり、加工段階における物理的な貼付行為を参考し、筆者はOEM製品の輸出入検査検疫証明書及び通関書類における商標の使用行為は同様に中国における商標の使用行為に属すると認め、主要に輸出手続きを取るとき、通関人員及び税関検査検疫人員はOEM製品の輸出条件を確認するとき、いずれも輸出入検査検疫証明書及び通関書類における商標により商品の出処を識別することになる。従って、OEM製品の輸出入検査検疫証明書及び通関書類における商標の使用行為は、中国における商標の使用行為に属する。
最高人民法院2019年の「HONDAKIT」相手先ブランド生産による商標権利侵害の紛争案の判決は、ここ数年の外国関連相手先ブランド生産貿易における商標権利侵害の紛争案の代表案となり、OEM貿易における通常の物理的な商標を貼付する行為が商標の使用行為に属することを明確にした。判決書は可能の具体的な使用行為を全て挙げられていないが、判決内容の指導により、中国における商標の使用行為の確認は、外国関連相手先ブランド生産における物理的な貼付など単一の行為のみに注目、または切り離すべきではなく、貼付、輸出などの行為を全体の国際流通市場において考慮と分析し、使用行為で商標に商品の出処を区別する可能性を与えられたかを更に判断すべきであることを明確にした。
3.商標の使用が権利侵害の判定に対する影響
2019年に最高人民法院の「HONDAKIT」相手先ブランド生産による商標権利侵害紛争案の判決結果が出た後、後続の類似案件の判決は基本的に商標法に基づいて使用行為に対して全体一致の解釈を行い、OEM貿易モデルには商標の使用行為が存在すると判断した。しかし、商標権利侵害を構成するかどうかについては、各々のケースの状況に基づいて具体的に分析する必要がある。
(1)同じ又は相似の商標は混同になれやすい
商標の使用が確定された後、商標により混同になるかどうかに対する確認は権利侵害行為確認の通常の判断基準になる。例えば、(2020)浙02行初82号、(2020)浙行終1950号、(2021)粤07民終7189号のケースでは、外国関連加工企業は商標の使用行為を構成し、双方の商標が近似で、混同されやすいため、商標権利侵害と認定された。
(2019)浙0206民初7747号のケースでは、外国関連加工企業も商標の使用行為を構成しているが、双方の商標は類似でなく、混同されにくいため、商標権利侵害にはならないと認定された。
(2)合理的な審査注意義務
商標使用が確認された後、外国関連加工企業が合理的な審査注意義務を果たしたかどうかは権利侵害認定の重要な根拠となった。例えば、(2020)遼02民終538号、(2020)沪0115民初4339号、(2020)閩09民初437号の判例では、外国関連加工企業は商標の使用を構成し、且つ合理的な審査注意義務を果たしていなかったため、商標権利侵害と認定された。
(2020)沪0115民初34561号のケースでも、外国関連加工企業は商標の使用行為を構成しているが、合理的な審査注意義務を果たしたため、商標権利侵害にならなかったと認定された。
(3)誠実信用原則の適用
相手先ブランド生産が商標権利侵害になるかどうかについて、国内の商標登録者が誠実信用の原則を守るかどうかも人民法院の裁判の重要な参考要素の一つとなっている。(2021)浙民申4890号のケースでは、外国関連加工企業に商標の使用行為があるにもかかわらず、国内の商標登録者は海外委託先の商標を知りながら悪意で商標を悪意のある先制登録し、その国内の登録に基づいて権利侵害の訴訟を起こすのは誠実信用の原則に違反するため、人民法院は商標権利侵害にならないと認定した。
まとめ
人民法院の近年の判決書からわかるように、外国関連相手先ブランド生産貿易において商標使用の行為は存在し、且つ混同の可能性を排除しない論争は日々減少し、最高人民法院の判決は司法実践の当該問題における審理基準を一致させたが、それは商標使用の存在、混同の可能性の存在が必ず商標権利侵害になることを意味しない。商標権利侵害の構成の確認については、中国商標法の商標権利侵害判断に関する基本規則に従い、個別のケースの具体的な状況に基づいて具体的に分析しべきである。例えば、加工製品に貼付された商標が海外商標、国内登録商標と同一又は類似しているかどうか、国内登録商標の指定商品と類似しているかどうか、国内登録商標の知名度、代工企業が合理的な審査注意義務を果たしたかどうか、商標の合理的な使用に属するかどうか、法定の権利侵害の抗弁事由が存在するかどうか、国内の商標登録者が商標の権利を濫用するかどうか、誠実と信用の原則に違反するかどうかなど、これらはすべて具体的な案件で商標権利侵害の構成の認定に影響を与える。
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