近年、人工知能(以下、AI)の技術革新は新たな進歩を遂げ、新たな科学技術革命と産業変革の重要な原動力となっており、人工知能関連の特許出願件数は急速に増加しています。これに関連して、国家知識産権局は2024年末、中国の現在の特許法制度の枠組みの下でAI分野の特許審査政策を包括的かつ深く解釈し、革新的企業が共通に懸念するホットな法的問題に対応する「人工知能関連発明の特許出願(審判)に関するガイドライン(試行)」(以下、「ガイドライン」という)を発行しました。その主な内容を以下に紹介します。
目次
I、 AI 関連特許出願の一般的な種類
タイプ1:AI アルゴリズムまたはモデル自体に関わる関連特許出願
タイプ2:AI アルゴリズムまたはモデルに基づく機能またはフィールドアプリケーションを含む関連特許出願
タイプ3:AI 支援を利用した発明に関わる関連特許出願
タイプ4:AI による発明に関わる関連特許出願
II、AI関連の特許出願における注目の法的問題
一、発明者の適格性
二、AI出願の客体の判断
三、明細書の十分な開示の要件
四、AI出願における進歩性の判断
五、AI の倫理問題
I、 AI関連の一般的な特許出願の種類
人工知能関連の特許出願 (以下、AI 出願といいます) のソリューションには、通常、AI アルゴリズムまたはモデルに加えて、AI アルゴリズムまたはモデルの機能またはフィールドアプリケーションが含まれます。さらに、AI 技術が進歩を続けるにつれて、AI 支援による発明や AI による発明に関する特許出願が新たな注目のトピックとなっています。 AI 出願は主に以下の種類に分類されます。
タイプ 1: AI アルゴリズムまたはモデル自体に関わる関連特許出願
このタイプの特許出願には、通常、AI アルゴリズムまたはモデル自体、およびモデル構造、モデル圧縮、モデルトレーニングなどのその改善または最適化が含まれます。
タイプ 2: AIアルゴリズムまたはモデルに基づく機能またはフィールドアプリケーションに関わる関連特許出願
このタイプの特許出願は、製品、方法、またはその改善に対し提出された案の本質的な部分として、AI アルゴリズムまたはモデルを発明に統合すること、つまり、1つ以上のAIアルゴリズムまたはモデルを使用して機能を実現したり、AI をさまざまなシナリオに適用したりすることを指します。たとえば、AI グラフィックス鮮明化技術に基づいた新しい電子顕微鏡、またはAIの交通運送、電気通信などの分野での使用です。
タイプ 3: AI 支援による発明に関わる関連特許出願
AI支援による発明とは、発明のプロセスにおいて、補助ツールとしてAI技術を使用して得た発明です。この場合、AIは情報処理装置や描画ツールのような役割を果たします。たとえば、AI により特定のタンパク質結合部位を認識し、最終的に新たな薬物化合物を取得します。
タイプ 4: AI によって生成された発明に関わる関連特許出願
AIにより生成した発明とは、AI技術によって独自に設計された食品容器など、人間の実質的な貢献なしにAIによって独自に生成された発明を指します。
「注: 中国国家知識産権局が発行しました「よくある質問の回答」によりますと、次の図に示すように、発明において AI が果たす「役割」の違いに応じて上記 4 つのタイプに分けられ、そのうち「タイプ 1」と「タイプ 2」は案の保護対象の違いに応じて分けられ、「タイプ 3」と「タイプ 4」は自然人による実質的な貢献の有無に応じて分けられます」
II、AI関連の特許出願における注目の法的問題
AI 技術は急速かつ反復的に発展しており、さまざまな種類の AI 関連の特許出願は、特許承認の各段階でさまざまな法的問題に関わります。前述の 4 種類の AI 出願のよくある法的問題には、たとえば、タイプ 3 とタイプ 4 の発明者の身元問題、タイプ 1 とタイプ 2 の客体、十分な開示と進歩性の問題、および上記の各種類の特許出願のそれぞれが直面する可能性のある AI 倫理問題などがあります。上記のホットな法的問題と具体的な注意す事項に対し、次のように詳しく説明します。
一、発明者の適格性
特許法の実施細則では、次のように規定されています。 特許法における発明者または設計者とは、発明の実質的な特徴に対して創造的な貢献をした人を指します。 「ガイドライン」では、特許文書に記載される発明者は自然人でなければならず、AIシステムやその他の非自然人が発明者になることは認められていないことを確認しています。発明者が複数いる場合、各発明者はいずれも自然人でなければなりません。AIシステムは現在、民事主体として民事権利を享受できないため、発明者になることはできません。
タイプ 1 およびタイプ 2 に関わる関連特許出願の場合、発明者とは、発明の実質的な特徴に創造的な貢献をした人を指します。
タイプ 3 の場合、発明の実質的特徴に創造的な貢献をした自然人が特許出願の発明者として署名することができます。タイプ 4 の場合、中国の現在の法的背景では AI 発明者の身分を与えることはできません。
二、AI出願の客体の判断
AI出願の客体の判断は、通常、タイプ1とタイプ2の出願に関わり、客体の判断は2つの段階を含み、第1段階でその案が「知的活動のルールと方法」に属するかどうかを判断し、第1段階を終わったあと、第2段階でその案が「技術案」に属するかどうかを判断します。
1、ステップ1:「知的活動のルールと方法」についての判断
特許法第25条第1項第2号は、「知的活動のルール及び方法」については、特許権を付与してはならないと規定しています。一つの特許請求の範囲に知的活動のルールや方法の内容を含み、技術的特徴も含まれており、当該技術的特徴が主題のタイトルに反映されているだけではない場合、該請求項は全体として知的活動のルールや方法ではありません。
AIアルゴリズムまたはモデルに関わる特許出願 (タイプ 1) の請求項に抽象的な数学理論または数学アルゴリズムのみが含まれ、いかなる技術的特徴も含まれていない場合、知的活動のルールおよび方法であり、特許権を付与することはできません。例えば、いかなる技術的特徴も含まない抽象的なアルゴリズムに基づいた一般的なニューラルネットワークモデルの構築方法、またはいかなる技術的特徴も含まなく、最適化された損失関数を利用して一般的なニューラルネットワークをトレーニングしてトレーニングの収束を加速するための方法は、いずれも抽象的な数学アルゴリズムとみなされ、知的活動のルールおよび方法に属します。
技術案が知的活動のルールおよび方法としてなされることの欠点を回避または克服するために、出願人は、アルゴリズム特徴に関連する技術的特徴を請求項に記載することができ、その結果、請求項全体が知的活動のルールおよび方法ではなくなります。たとえば、人工知能モデルの処理方法に関する一つの請求項では、その特徴部分に、当該方法が人工知能チップによって実行されることが明確に記載されています。案全体は当該方法が実行されるハードウェア環境を記載し、当該ハードウェア環境は技術的特徴に属するため、請求項の案全体としては知的活動のルールおよび方法に属しません。もう 1 つの例は、ニューラルネットワークモデルの処理方法に関する請求項において、この案に当該方法が画像の処理と分類に使用されることが明記されています。画像データの処理と分類は技術的な特徴に属するため、特許請求の案は全体として、知的活動全体のルールや方法に属しません。
2、ステップ2:「技術案」の判断
請求項の解決案が知的活動のルールおよび方法に該当しなくなったとしても、それが特許の保護の対象となることを望む場合には、また特許法第 2 条第 2 項の技術案に関する規定を満たす必要があります。
特許法第2条第2項に規定する「技術案」とは、解決しようとする技術的課題に対し取った自然法則を利用した技術的手段の集合を指します。一つの請求項に解決しようとする技術問題に対し自然法則を利用する技術的手段の使用が記録されており、それによって自然法則に従う技術的効果が得られる場合、当該請求項により限定される解決案は技術案に属します。逆に、自然法則に従う技術的手段を利用しなくて技術的問題を解決して自然法則に従う技術効果を獲得する案は技術案ではありません。
以下に技術案となる一般的な状況をいくつか示します。
シナリオ A: AI アルゴリズムまたはモデルが処理するのは、技術分野で確実な技術的意味を持つデータです
もし一つの請求項の内容がAI アルゴリズムまたはモデルによって処理されるオブジェクトが技術分野で確実な技術的意味を持つデータであることを反映でき、当業者の理解に基づいて、アルゴリズムまたはモデルの実行が自然法則を利用してある技術的問題を解決するプロセスを直接反映することがわかり、かつ技術的効果が得られる場合、当該請求項に限定された解決案は技術案となります。
たとえば、ニューラルネットワークモデルを利用して画像を識別および分類する方法です。画像データは、技術分野において確実な技術的意味を持つデータであり、当業者がソリューションにおける画像特徴を処理するさまざまなステップと、解決しようとするオブジェクトを識別および分類するという技術的問題とが密接に関連することがわかり、かつ対応する技術的効果が得られる場合、当該案は技術案である。
シナリオ B: AI アルゴリズムまたはモデルがコンピューターシステムの内部構造と特定の技術的関係を持っている
請求項の内容が、AIアルゴリズムまたはモデルとコンピューターシステムの内部構造との間の特定の技術的関係を反映することができ、それによって、データ保存量の削減、データ送信量の削減、ハードウェア処理速度の向上などを含むハードウェアの計算効率または実行効果をどのように改善するかという技術的問題を解決し、自然法則に従うコンピューターシステムの内部パフォーマンスを向上させる技術的効果を得ることができる場合、当該請求項で制限された解決案は技術案に属します。
この特定の技術関連は、技術実装レベルでのアルゴリズム特性とコンピューターシステムの内部構造関連特性との間の相互適応および協力を反映します。たとえば、特定のアルゴリズムまたはモデルの動作をサポートするためにコンピューターシステムのアーキテクチャまたは関連パラメータを調整すること、特定のコンピューターシステムの内部構造またはパラメータに対しアルゴリズムまたはモデルに適応的な改善を行うこと、または上記両者の組み合わせです。
たとえば、メモリスタアクセラレータのニューラルネットワークモデル圧縮方法において、次のものが含まれます。 ステップ 1. アレイ感知型の正則化増分枝刈りアルゴリズムを通じて、ネットワーク枝刈り中にメモリスタの実際のアレイサイズに応じて枝刈りの粒度が調整され、メモリスタアレイに適した正則化スパースモデルが取得されます。 ステップ 2. 2 のべき乗量化アルゴリズムを通じて、ADC 精度要件とメモリスタアレイ内の低抵抗デバイスの数が削減され、システム全体の消費電力を削減します。
特定の技術関連は、必ずしもコンピューターシステムのハードウェアアーキテクチャに対し変更を行うことを意味するものではありません。 AI アルゴリズム改善の案の場合、コンピューターシステムハードウェア構造自体に変更がなくても、当該案はシステムリソース構成を最適化することで、全体的にシステム内部パフォーマンスを向上させるという技術的効果が得られます。この場合、AIアルゴリズム特徴とコンピューターシステムの内部構造との間には、ハードウェアの実行効果を向上させることができる特定の技術関連があると考えられます。
例えば、ディープニューラルネットワークモデルのトレーニング方法は、次のステップを含みます。トレーニングデータのサイズが変更する場合、変更後のトレーニングデータに対して、前記変更後のトレーニングデータの予め設定された候補トレーニング案におけるトレーニング時間をそれぞれ計算します。予め設定された候補トレーニングプランの中から最小のトレーニング時間を有するトレーニングプランを、前記変更後のトレーニングデータの最適なトレーニングプランとして選択し、前記候補トレーニングプランには、シングルプロセッサトレーニングプランとデータ並列性に基づくマルチプロセッサトレーニングプランとが含まれます。前記変更後のトレーニングデータを最適なトレーニングプランでモデルトレーニングを実行します。
ただし、一つの請求項がコンピューターシステムのみを使用してAIアルゴリズムまたはモデルの動作を実現するためのキャリアとし、アルゴリズム特徴とコンピューターシステムの内部構造の間の特定の技術的関連を反映していない場合、シナリオ B の範囲に属しません。
例えば、ニューラルネットワークをトレーニングするためのコンピューターシステムは、メモリとプロセッサを含み、メモリは命令を記憶し、プロセッサは命令を読み取って、最適化された損失関数を使用してニューラルネットワークをトレーニングします。
シナリオ C: AI アルゴリズムに基づいて、自然法則に準拠した具体のアプリケーション分野のビッグデータにおける自然法則に従う内在的な関連関係をマイニングする
AIのアルゴリズムやモデルをさまざまな分野に適用すると、データの分析、評価、予測や推奨などを行うことができます。このような出願について、請求項において具体的な応用分野のビッグデータの処理、ニューラルネットワークなどのAI アルゴリズムを利用してデータ間の自然法則に従う内在的な関連関係をマイニングし、具体的な応用分野のビッグデータの信頼性または正確性をいかに向上させるかの問題を解決し、相応する技術的効果を得ることが反映できれば、当該請求項の案は技術案を構成します。
AIアルゴリズムやモデルを用いてデータマイニングを行い、入力データに基づいて出力結果を得ることができるAIモデルをトレーニングさせる手段は、直接的に技術的手段を構成することはできず、AIアルゴリズムやモデルに基づいてマイニングされたデータ間の内在的な関連関係が自然法則に従う場合にのみ、関連する手段全体が自然法則を利用した技術的手段を構成することができる。したがって、特許請求に記載の案では、分析結果を得るために、具体的にどのような指標やパラメータなどを利用して、分析対象の特徴を反映したかを明確にする必要があり、AIアルゴリズムまたはモデルを利用してマイニングされたこれらの指標やパラメータ等(モデル入力)と結果データ(モデル出力)との内在的な関連関係が自然法則に従ってるかどうかを明確にする必要があります。
例えば、食品安全リスク予測方法において、過去の食品安全リスク事件を取得および分析し、食品原材料、食用品目、および食品サンプリング有害物質を表す各ヘッドエンティティデータおよびテールエンティティデータ、ならびにそれらの対応するタイムスタンプデータを取得し、各ヘッドエンティティデータおよびその対応するテールエンティティデータ、およびその対応するタイムスタンプデータを搬送する、さまざまな有害物質の含有量レベル、リスク、または介入を表すエンティティ関係に基づいて、対応するクアッドグループデータを構築し、対応するナレッジグラフを取得します。このナレッジグラフを使用して、予め設定されたニューラルネットワークをトレーニングして食品安全ナレッジグラフモデルを取得し、前記食品安全ナレッジグラフモデルに基づいて、予測待ちの時点の食品安全リスクを予測します。
AI アルゴリズムまたはモデルによってマイニングされた指標パラメーターと予測結果との間の内在的な関連関係が経済法則または社会法則のみに制限される場合、自然法則に従っていない状況になります。たとえば、ニューラルネットワークを利用して地域の経済繁栄指数を予測する方法において、ニューラルネットワークを利用して、経済データおよび電力消費データと経済繁栄指数の間の内在的な関連関係をマイニングし、この内在的な関連関係に基づいて地域の経済繁栄指数を予測します。経済データ及び電力消費データと経済繁栄指数間との間の内在的な関連関係は経済法則によって制限されており、自然法則の影響を受けないため、この案は技術的手段を利用しておらず、技術案を構成しません。
技術案を構成しない欠陥を回避または克服するために、AI 出願の場合、出願人は、上記の例のシナリオA ~ C を参照して出願書類を作成し、元の明細書において、当該案によって解決される技術的課題、採用された技術的手段、および得られる技術的効果を詳細に説明する、または審査意見に応答する際に、元の出願書類の記載に基づいて請求項を修正し、修正後の案が技術案である理由を意見書で十分に説明することができます。
例えば、抽象AI アルゴリズムまたはモデルに関わる請求項の場合、アルゴリズムまたはモデルにより処理されるのが技術分野で確実な技術的意味を持つテキスト、画像、オーディオまたはビデオなどのデータであることを請求項に反映することができ、これにより、当業者の理解に基づいて、アルゴリズムの実行が自然法則を使用して当該分野の特定の技術的問題を解決するプロセスを直接反映し、技術的効果を得ることができます。
別の例として、発明がコンピューターシステムの内部パフォーマンスの改善に関係する場合、元の出願書類における、アルゴリズムとコンピューターシステムの内部構造との間に特定の技術的関係があることを反映する技術的特徴を請求項に追加することができます。例えば、ニューラルネットワークのトレーニング方法に関する請求項では、分散システムを利用してニューラルネットワークのトレーニングする場合に、ニューラルネットワークのトレーニングアルゴリズムと特定技術関連を生成する分散コンピューティングノードのリソース割り当てや情報のインタラクション送信などの特徴を追加し、これにより、この案がトレーニング中のハードウェアの実行効果を向上させ、自然法則に従うコンピューターシステムの内部パフォーマンスを向上させる技術的効果を得ることができることが反映されます。
別の例として、AI アルゴリズムやモデルを利用して具体の応用分野におけるビッグデータに対し分析、予測、または評価などを行う解決案に関わる場合、作成する時、請求項には、どの指標、パラメーターなどが利用され、どのようなアルゴリズムやモデルが利用されどのような予測結果を得たかを明確に記録する必要があります。審査意見に応答する際には、アルゴリズムやモデルによって処理されたデータと分析および予測しようとする結果の間になぜ自然法則に拘束されるのかを分析することに重点を置く必要があり、単に管理学、経済学などの不自然な法則を反映することではあいません。
三、明細書の完全な開示の要件
AI アルゴリズムまたはモデルの透明性の問題は、常に注目を集めてきました。データの入力から出力までの過程では、その内部の推論や決定のプロセスが説明しにくい一方で、同じモデルやパラメータ設定を使用したとしても、期待する効果を生み出すことが困難です。したがって、明細書の完全な開示の要件をどのように満たし、さらに AI アルゴリズムまたはモデルの透明性と解釈可能性を向上させるかは、AI 出願審査の重要な面でもあります。
AI出願の明細書は、発明の技術案を明確に記録し、発明を実現するための具体的な実施方法を詳細に記載し、当業者が発明を実現できる程度で発明の理解と実現に不可欠な技術内容を完全に開示する必要があります。
AI アルゴリズムまたはモデルには「ブラックボックス」特性があり、完全な開示を達成するには十分な情報が必要です。発明の貢献の異なりによって、当該発明を実現するために必要な技術内容も異なります。明細書は先行技術に寄与する部分を十分に説明する必要があります。特許発明の概念を反映する技術的手段については、技術分野の当業者の実施可能を準じて、明細書が明確かつ完全に記載する必要があります。明細書では、出願が従来の技術とを比較して有益な効果もつことを明確かつ客観的に説明する必要があります。必要に応じて、発明への貢献を証明するために対応する証拠を提供することができます。
以下は、次のような状況の提案の例です。
発明の貢献は、AI モデルのトレーニングである出願。一般に、解決すべき問題や達成すべき効果に基づいて、明細書において必要なモデルトレーニングプロセスに関わるアルゴリズムとアルゴリズムの具体的な手順、トレーニング方法の具体的なプロセスなどを明確に記録される必要があります。
発明の貢献は、AI モデルの構築である出願。一般に、解決すべき問題や達成すべき効果に基づいて、明細書において必要なモジュール構造、階層構造、接続関係などを記載すべきであり、モデルの機能と効果を正確かつ客観的に記述する必要があります。必要に応じて、改善後の効果を実験データや解析・実証等により表明することができます。
発明の貢献が具体の分野におけるAIの応用である出願。一般に、解決すべき問題や達成すべき効果に基づいて、明細書において、モデルが具体のアプリケーションシナリオとどのように組み合わされるか、入出力データをいかに設定するなどを明確にする必要があります。必要に応じて、当業者が入力データと出力データと間の関連関係があると判断できるように、明細書に入力データと出力データとの相関関係も明記する必要があります。
明細書の開示が不十分であるという審査意見に対しては、意見を述べる際に、当該技術分野の技術者が関連の解決案を実現できる理由と根拠を記載する必要があります。なお、明細書が十分に開示されているかどうかを判断するには、元の明細書および特許請求の範囲に記録された内容に準する。
四、AI出願の進歩性の判断
AI出願の解決案には、通常、大量のアルゴリズム特徴が含まれています。進歩性を考慮する場合、技術特徴と機能的に相互にサポートし、相互に作用する関係があるアルゴリズム的特徴と、前記技術的特徴を全体として考慮する必要があります。 「機能的に相互にサポートし、相互に作用する関係がある」とは、アルゴリズム特徴と技術的特徴が密接に組み合わされて、ある技術的課題を解決するための技術的手段を共同に構成し、且つ相応の技術的効果を得ることができることを意味します。技術案を全体として検討した後、従来の技術と比較して、当該案が顕著な実質的特徴と顕著な進歩を備えている場合、請求項は進歩性を有します。
技術的特徴と全体として考慮されたアルゴリズム特徴が技術案に貢献する状況の例を以下に示します。
シナリオ 1. AI アルゴリズム特徴が技術的手段の構成部分にする
AIアルゴリズム特徴を進歩性の判断において技術的手段の一部として含ませるためには、AI アルゴリズムまたはモデルが具体の機能を実現するとき、または具体の分野に適用されるときに特定の技術的問題を解決したことを請求項に反映する必要があり、これにより、アルゴリズム特徴と技術的特徴が機能的に相互にサポートし、相互に作用する関係があることを明確にし、アルゴリズム特徴を技術的手段の構成部分とします。
1.1 AIアルゴリズムやモデルを特定の機能や分野に適用する場合、アルゴリズム特徴の技術案に対する貢献を考慮する必要がある
AI のアルゴリズムやモデルを利用して特定の機能を実現したり、特定の分野に適用する出願については、技術案のアルゴリズム特徴が進歩性的評価の際に技術的貢献をもたらすようにするため、記載の際に、特定の機能を実現したり、特定の分野に適用したりする際に解決される技術的課題、採用された自然法則に従った技術的手段、及びそれによって得られる自然法則に沿った技術的効果についても記載する必要があり、アルゴリズムまたはモデルを実施に不可欠のないようも明記すべきです。技術案が従来の AI アルゴリズムのプロセスやモデルのパラメーターの調整に関わり、当該調整によって特定の機能の実現や特定の分野への適用時に直面する技術的問題が解決され、有益な技術的効果が得られる場合、アルゴリズム特徴と技術的特徴は機能的に相互にサポートし、相互に作用する関係があり、進歩性を判断する際には、アルゴリズム特徴の技術案への貢献を考慮する必要があります。
例えば、現状の人型ロボットの歩行時の転倒状態の判定には主に姿勢情報やZMP点の位置情報が用いられていますが、これは包括的な判定ではありません。ある出願は、ロボットの歩行位相情報、姿勢情報、ZMP 点の位置情報をリアルタイムに融合し、ファジィ判定システムを使用することで、ロボットの現在の安定性と制御性を判断し、ロボットの次の動作のために基準を提供する、複数のセンサーに基づいて人型ロボットの転倒状態を検出する方法を提案します。その解決案は、マルチセンサ情報に基づいた人型ロボットの転倒状態を検出する方法であり、以下のステップを含むことを特徴とします。(1) 姿勢センサ情報、ゼロモーメント点ZMPセンサ情報、およびロボットの歩行段階情報を融合することにより、段階構造のセンサ情報融合モデルを構築します。(2) 前後ファジィ意思決定システムおよび左右ファジィ意思決定システムを使用して、ロボットの前後方向、左右方向の安定性を判断し、具体的な手順は次のとおりです: ① ロボットの支持足と地面との接触状況とオフライン歩行計画に基づいてロボットの歩行段階を決定します。 ② ファジィ推論アルゴリズムを使用してZMP 点の位置情報をファジィ化します。③ファジィ推論アルゴリズムを使用してロボットのピッチ角またはロール角をファジィ化します。④出力依存関数の決定します。⑤手順①~手順④に従ってファジィ推論規則を確定します。⑥ファジィ除去します。従来技術は人型ロボットの足並み計画とセンサ情報に基づくフィードバック制御を開示し、そして関連融合情報に基づいてロボット安定性を判断し、その中には複数のセンサ情報に基づいて人型ロボット安定状態評価を行うことを含み、すなわち従来技術はこの解決案の中のステップ(1)を公開し、この解決案と従来技術の区別はステップ(2)の具体的なアルゴリズムを用いたファジィ決定方法であります。この出願に基づいて、この解決案がロボットの安定状態と、ロボットが倒れる方向を判断する信頼性と精度を効果的に向上させることがわかります。姿勢情報、ZMP点位置情報、及び歩行段階情報を入力パラメータとし、ファジィアルゴリズムを用いて人型ロボットの安定状態を判断する情報を出力し、正確な姿勢調整指示を行うために根拠を提供します。したがって、上述のアルゴリズム特徴と技術的特徴は、機能的に相互にサポートし、相互作用の関係を有し、従来の技術と比較して、発明によって実際に解決される技術的課題は、ロボットの安定状態をいかに判断し、その可能な倒れる方向をいかに正確に予測するかであると確定されます。上記のファジー意思決定の実現アルゴリズムと、それをロボットの安定状態の判断への適用は、他の引用文献には開示されておらず、また、当該分野における常識ではありません。従来の技術には、全体として、当業者に、従来の技術を改良させることで、保護を求める発明を得るの示唆が存在しません。保護が求められる発明の技術案は、最も近い従来技術に対して自明でなく、進歩性を備えています。
1.2 AIアルゴリズムまたはモデルをさまざまなシナリオに適用するときに考慮すべき要素
出願案に記載された AI アルゴリズムまたはモデルが従来の技術に属し、技術案の改善が既存のシナリオからこの出願のシナリオに適用することである場合、進歩性の検討では、アルゴリズムまたはモデルが適用されるシナリオの距離、対応する技術的示唆の有無、さまざまなシナリオでの適用の難しさ、技術的困難を克服する必要があるかどうか、予期できない技術的効果をもたらすかどうかなどを包括的に考慮する必要があります。
さらに、アルゴリズムまたはモデルがさまざまなシナリオに適用され、技術的な困難の克服によりアルゴリズムまたはモデルのトレーニング方法、パラメーター、構成などの要素に対する調整を実現されず、予期できない技術的効果も得られない場合、その案は進歩性有しません。
たとえば、ある出願は、船舶の画像データに基づいて、深層学習を通じてリアルタイム検出データモデルをトレーニングし、検出された船舶の数を合計して、現在の海域の船舶の数をリアルタイムにフィードバックするという技術的問題を解決する、船舶数の統計方法に関します。最も近い従来技術は、木の上の果物の数をカウントする方法を開示しており、当該出願の深層学習モデルのトレーニングと数量カウントのステップを開示しています。その違いは、識別の相手が異なり、異なるアプリケーション シナリオに属します。船と果物の間には、外観、体積、存在する環境などの点で違いがありますが、当業者にとって、両者で使用される手段はいずれも、取得した画像情報に対してオブジェクト認識とモデルトレーニングを実行し、その後、数の統計を完了し、画像を識別する際に、同様に識別されたオブジェクトの位置と境界を考慮しました。画像内の船の識別とトレーニング、および画像内の果物の識別とトレーニングが深層学習、モデルトレーニングプロセス、および画像認識における処理方法を変更せず、得られる技術的効果が統計結果をより正確にすることである場合、トレーニングデータの違いは、データの意味が異なることを意味するだけであり、データの意味の違いがアルゴリズムの改善または実現に制約、影響、または制限することはなく、アプリケーションシナリオの違いもアルゴリズムモデルの設計に異なる制約、影響、または制限することはありません。したがって、従来技術の果物の統計方法を当該案の船舶統計に適用した場合、その効果は従来技術に基づいて予測可能であり、予期できない技術的効果は生じず、当該案は進歩性を有しません。
シナリオ 2. AIアルゴリズムまたはモデルは、コンピューターシステムの内部構造と特定の技術的関係を持つ
AIのアルゴリズムまたはモデルがコンピューターシステムの内部構造と特定の技術的関係を持ち、コンピューターシステムの内部パフォーマンスの向上を達成する場合、進歩性を判断する際には、技術案のアルゴリズム特徴と技術的特徴が全体として考慮されます。
コンピューターシステムの内部パフォーマンスの向上には、ハードウェアシステムのアーキテクチャの調整により特定のアルゴリズムやモデルの動作をサポートまたは最適化し、アルゴリズムやモデルの実行によりコンピューターシステム内のハードウェアリソースのスケジューリングなどの最適化が含まれます。この場合、技術案のアルゴリズム特徴と技術的特徴が全体として考慮されます。従来の技術が技術的な示唆を提供しない場合、技術案は進歩性を有します。
たとえば、ある出願には、畳み込みニューラルネットワークを調整する方法に関わり、ニューラルネットワークの固定小数点化を通じてリソース使用量を削減し、これにより、低ビットの定点量子化を備えたニューラルネットワークモデルを低ビット幅のFPGAプラットフォーム上で実行でき、低ビット幅で浮動小数点ネットワークに匹敵する計算精度を達成できます。最も近い先行技術は、畳み込みニューラルネットワークの動的固定小数点パラメータに基づく固定小数点トレーニング方法を開示され、この方法は、畳み込みニューラルネットワークのトレーニングプロセス中に順方向計算を実行するために固定小数点方法を使用しており、いくつかののトレーニングサイクル内でネットワークの精度が浮動小数点計算のレベルに達します。この案と最も近い従来技術との違いは、高ビットの定点量子化を使用して畳み込みニューラルネットワークをトレーニングした後、FPGA の低ビット幅を通じて畳み込みニューラルネットワークを微調整します。この区別特徴に基づいて、本出願は、マルチレベルの大規模データ量の畳み込みニューラルネットワークを小規模FPGA 組み込みシステムに使用する場合に、限られたコンピューティングリソースによって引き起こされる精度の低下の問題を解決し、畳み込みニューラルネットワークのFPGA プラットフォームでトレーニングのリソース使用量を削減し、小型 FPGA 組み込みシステムで浮動小数点ネットワークに匹敵する計算精度を達成するという技術的効果を実現します。アルゴリズム特徴とFPGA の低ビット幅などの技術特徴を全体として考慮すると、従来の技術に技術的な示唆はなく、当該案は進歩性を有します。
シナリオ 3. AI アルゴリズムまたはモデルと技術的特徴は共同に技術的手段を構成してユーザーの体験を向上させる
技術案における AI アルゴリズム特徴と技術特徴が共にユーザーの体験向上させる場合、進歩性を判断する際にアルゴリズム特徴と技術的特徴を全体として考慮することになります。従来の技術が技術的示唆を提供しない場合、その技術案は進歩性を有します。
例えば、ある出願は、オンラインカスタマーサービスを実現する方法に関わり、これは、ユーザーが人工カスタマーサービスによる苦情や相談などのサービスの利用に傾向があり、その結果、ロボットカスタマーサービスと人工カスタマーサービスのリソースが適切に活用されず、手動カスタマーサービス処理にストレスがかかるという既存の電子商取引プラットフォームの技術的問題を解決します。使用される主な解決案には、長短期記憶ネットワークを使用してユーザー要求のコンテキストを分析すること、遺伝的アルゴリズムに加え人工とロボットの顧客サービスの動的割り当てを最適化することが含まれます。人工による顧客サービスの負荷が過負荷であることが検出されると、システムは長短期の記憶ネットワークを使用して予測し、適切なリクエストをロボットカスタマーサービスに自動的に送信し、人工カスタマーサービスの処理負荷を軽減します。最も近い従来技術では、オンラインカスタマーサービスとのチャット方法が開示されており、具体的には、ロボットカスタマーサービスのみ、ロボットカスタマーサービス優先、人工カスタマーサービス優先の3つのカスタマーサービス方法をユーザーが自由に選択・切り替えのできることが開示されており、「人間カスタマーサービス優先」モードでは、人工の受付制限に達した場合や行列ができた場合にロボットカスタマーサービスがユーザーとコミュニケーションを行う。最も近い従来の技術は、主にユーザーの選択に基づいて人工カスタマーサービスとロボットカスタマーサービスを切り替え、且つ人工カスタマーサービスが混雑しているかどうかを判断する基準は、受付が制限に達したがや行列ができたかであり、これは本願の人工知能アルゴリズムにより重み付けたあと自動に切り替えとは異なります。当該解決案は、アクセス負荷に基づいて、人工知能アルゴリズムで分析し、自動的にロボットカスタマーサービスに切り替え、ロボットカスタマーサービスと人工カスタマーサービスの間により合理的ユーザーサービスリクエストを割当るという技術的問題を解決し、ユーザーの待ち時間を節約し、ユーザー体験を向上させることができます。したがって、技術案は進歩性を有します。
審査意見応答の際の提案:
アルゴリズム特徴を含む AI 出願の場合、技術案と最も近い先行技術である引用文献との区別特徴にアルゴリズム特徴が含まれる場合、審査官が上記アルゴリズム特徴と技術特徴が機能的に相互にサポートしておらず、相互に作用する関係がないと考える場合、技術案に対するアルゴリズム特徴の貢献は考慮されない可能性があります。
このような審査意見については、応答する際に、区別特徴としてのアルゴリズム特徴が技術案に技術的問題を解決させることができるかどうか、これらの特徴が出願によって解決される技術的問題と緊密に関連しているかどうか、技術特徴と機能的に相互にサポートし、相互に作用する関係があるかどうかを明確にする必要があります。審査意見で指摘された不備を克服するために、補正の際に、原の出願書類において最も近い先行技術と区別がある技術的特徴、又は請求項における技術的特徴と機能的に相互にサポートし、相互に作用する関係があるアルゴリズム特徴を特許請求の範囲に追加することが検討されます。
上記のシナリオ 1 について、出願が従来の技術と同一または類似の AI アルゴリズムまたはモデルを使用しており、両者の主な違いが機能または適用分野である場合、進歩性がないとの審査意見に対して、応答する際に、本願の機能を実現するとき、または本願の分野に適用するときに、当該アルゴリズムまたはモデルがどのような技術的困難を克服する必要があるか、またはどのような予期できない技術的効果が得られるかなどを述べることに重点を置くことができます。
上記のシナリオ 2 について、本願と従来技術との主な相違点がアルゴリズム特徴にある場合、進歩性がないとの審査意見に対し、応答する際に、上記アルゴリズム特徴とコンピューターシステムの内部構造との間に特定の技術的関係があり、コンピューターシステムの内部性能を向上させる技術的効果が得られることを意見書に記載することができる。
上記のシナリオ3 について、出願の解決案がユーザーの体験を向上させる可能性がある場合、進歩性がないとの審査意見に対し、応答する際に、本願によって得られるユーザー体験向上の有益な効果が、技術的特徴によってもたらされる、または相互にサポートし相互作用する関係がある技術的特徴とアルゴリズム特徴によって共同にもたらされる理由を説明することができます。
五、AIの倫理問題
異なる分野での AIアルゴリズムまたはモデルの適用に関わる場合、申請人は、アルゴリズムまたはモデルに関する技術案が、具体の分野に適用された場合に、関連する法律、社会倫理に違反するか、公共の利益を損害するかどうかに注意を払う必要があります。 AIによるデータの取得・活用においては、データの由来、アプリケーションシナリオ、セキュリティ管理、利用規則等各フェーズが関連法規に準拠しているかに注意が必要です。データの内容自体に加えて、具体のデータの収集、保管、処理などの手段も関連法律の要件に準拠する必要があり、社会倫理に違反したり公共の利益を妨げたりしてはなりません。
AI技術の急速な発展に伴い、特許出願は革新的な成果を保護し、技術の商業化を促進するための重要な手段となっています。申請人と弁理士にとっては、AI 出願の審査ポイントと作成テクニックを深く理解することが重要です。上記の内容が、申請人や弁理士のAI 出願の実践際に有益な参考となり、熾烈な市場競争でのリードをサポートし、AI 技術の革新と応用に役立つことを願っています。
上記の記事や知的財産保護についてご質問がある場合は、お気軽にメールまたはお電話ください。特許に関するお問い合わせは、info@afdip.com までお願いいたします。商標/訴訟/法律問題については、info@bhtdlaw.com までお願いいたします。